脅かされた職人の地位
こんにちは。秋らしい晴天が続いていますね。お元気ですか。
古い話ですが、産業革命の頃のイギリスでは、インドから輸入した毛織物産業が盛んでした。そしてその後、軽くて洗いやすい綿織物工業の時代に移ります。その際、新技術が発明され2人分の仕事が1人でできるようになりました。時とともに次々に技術は改良され、益々効率が上がりました。
「その発明者は、巨万の富を得て悠々自適の生活を過ごしたんだろうなあ・・・」
と思ったのですが、実際には悲しいことが起きていました。職を失った労働者たちに襲われ、フランスに逃げて貧困のうちに亡くなったのです。その後も機械化が高度に進むうちに素人にも扱えるようになり、職人の社会的地位は地に落ちていきました。
工業化により国家の富は増大したものの、労働者の生活は逆に苦しくなり、そのうちに手工業者(職人)達は機械の打ちこわし運動を始めました。まさに「やけくそ」の世相ですね。効率を上げるための新しい発明は、働く人たちの生活の向上には繋がらなかった様です。
最近の日本の雇用状況は、良好と言われています。しかし「10年以内に世界的に大失業時代が訪れる」と予測をする学者もいます。AIとそれに制御されたロボットが、人から職を奪う・・・と言います。労働者(あるいは職人)の失業は、全産業の領域に及ぶであろう・・・とも。
歴史は繰り返すといわれます。AIと職人による仕事の争奪戦が起きた時、額装職人がそれに巻き込まれることがないよう準備をしておきたい。そんなことをぼんやりとながら考えています。小生の年齢では、草葉の陰から見守ることになりそうですが。
そうは言いましても、現在のところ弊社では職人による手作業で仕事が続いています。
アンドレ・ブラジリエの原画の額装が始まりました。下塗りは黒。金箔を貼りますが、全体にではありません。貼らない部分は、マスキングテープで覆っておきます。
次回、この後のウルトラ職人仕事を報告とさせていただきます。
額装の㈱アート・コアマエダ(店主)