五感

「人は五感のうち約8割を視覚から得ている」と言われています。
額縁の仕事も“目で見て美しくする”ことではあるものの、実際の作業では視覚だけでなく、五感すべてが大切だと感じています。
そしてそこに“心”が加わることで、ようやく一つの額装が完成していくのだと思っています。

視覚
絵と額縁のバランス、美しさ。
ミリ単位…ではなく、時にはマイクロメートル単位にまで気を配って作業します。
最終判断はやはり“目”に委ねられます。

触覚
木材の質感や繊細な感触。
ほんの小さな段差やざらつきは、目よりも指先の方が早く気づくこともあります。
“手が目の代わりになる”瞬間が、作業にはたくさんあります。

聴覚
額縁を研ぐ音、木材を切る音、テープを切る音、静かな金箔の音。
心地よい音が作業のリズムを刻みます。
うまくいっているときは気持ちのいい音が響き、少し違う音には「ん?」とすぐに気づきます。

嗅覚
木や塗料の匂いは作業場の空気そのもの。
独特の香りに包まれると、「よし、今日もがんばろ!」と自然と心が切り替わります。

味覚
集中したあとの一杯のコーヒーやお茶。
その「おいしい」というひとときが、次への力を与えてくれます。


どんなに技術を磨いても、そこに“心”がなければ単なる作業に過ぎません。時には額縁が飾られる部屋や、手にした人の喜ぶ姿を想像しながら作業を進めます。心は目には見えませんが、仕上がりには確かに表れてくると信じています。

 
額縁の絵は視覚で愛でるものですが、実際は五感と心のすべてで支えられています。
いい絵からは音をも感じ取れ、五感を刺激されるように、いい額縁もまた五感を使って作られ、絵を引き立てます。

目で見て、手で感じ、耳で確かめ、鼻で切り替え、口でひと息。そして心を込める。

その積み重ねが、作品をより美しく包み込む額縁を生み出しています。

 

↑新人のNさん。いい研ぎ音が聞こえてきたかな?
 

額も研ぐけど五感も研ぎ澄ましていきたい
額装の(株)アート・コア マエダ(夕佳)

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